特集コラム#1:家入レオ『君がくれた夏』
西尾芳彦(音楽プロデューサー/作詞・作曲家)
(2015.9.13 インタビュー・文:藤本雅子 )
今話題のフジテレビ月9ドラマ『恋仲』の主題歌『君がくれた夏』の作曲を手がけ、今や誰もが知るメジャーアーティストとなったシンガーソングライターのYUI、絢香、家入レオをその手によってスターに育て上げ世に送り出してきた「音楽塾ヴォイス」塾長・西尾芳彦氏。
絢香の『三日月』『Jewelry day』など今なお名曲と謳われる曲も氏の作曲によるもの。
現在ヒット中の『君がくれた夏』の制作話や作品に込められた想い、また今後の展望について、聞いた。
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——— 月9ドラマ『恋仲』の主題歌『君がくれた夏』を歌う家入レオさんは西尾さん主宰の「音楽塾ヴォイス」の卒業生ですが、彼女とはどのように出会い、育てられ今に至るのですか?
西尾 「彼女が福岡校に入塾してきたのは13歳の時だったと思います。音楽塾ヴォイスは設立当初から入塾は音源審査を含むオーディション制なのですが、テープで彼女の声を聞いて、これは!と一瞬でピンときました。声を聞いただけでもその人の持つ声の力のようなものは分かります。そして、実際に本人に会ってみて、その思いがより強くなりましたね。入塾当初の彼女はニコリともしない、全く大人を信用していない態度でした。そこから頑張ってレッスンを2,3年続け、15歳になるころには歌の表現力もつくようになりました。そして、今は彼女のスタイルともなっている射るような目で睨み付けて歌う姿がレコード会社の方の目に留まったんですね。」
——— 『恋仲』の主題歌はどのような経緯で作曲をすることになったのですか?
西尾 「フジテレビの藤野プロデューサーからお話をいただいて、台本も読ませていただいて制作を始めました。藤野プロデューサーとは『海の上の診療所』主題歌『太陽の女神』以来、二作品目となるので、前回以上に期待に応えられるように頑張りました。ありがたい事に今回でドラマの主題歌を担当させて頂くのは11作品目となります。」
——— 10年でもうそんなになるんですね。
西尾 「そうなんです。ただ、経験は積んできているとはいえその都度新しい作品に対する取り組みなので、いつも多いに悩み苦しんでいます。そういった不安と楽しみが混在している中でも、作品の出来上がりを考えるとどこかわくわくしてしまうんですけどね。」
——— 『君がくれた夏』のメロディも歌詞も切なくドラマに絶妙にあっていると評判ですが、制作するにあたって一番苦労されたことは何ですか?
西尾 「福士蒼汰さんが主人公を演じる王道の青春ドラマであり切ないシーンが多くなるのでそれに合わせて作ってくださいという事でお話を頂いたのですが、一言で切ないと言っても悲しみよりの切なさや、ほろ苦さを含む感動寄りの切なさもあるわけで、そんな様々な意味合いの切なさに合う楽曲でなければならなかったのでそこが一番苦労したところかも知れません。かつ、ドラマの場合あまり内容に合わせすぎてもだめだし、全く内容を無視しても作れないので、そことの兼ね合いも非常に難しかったです。当然ですがこの時点ではドラマ自体を見ながら作るのではなく、前情報は台本だけです。でも僕の場合はそのほうがよく、色んな想像を働かせながら、自分も視聴者の立場となって、そのバックに流れるのはこんな感じがいいのではないかと頭の中で組み立てて、実際に音に変換していく作業をしました。もちろん藤野プロデューサーからの指示が一番ですので、そこが大前提という形で作っていきました。」
——— 歌い方、表現方法等、アーティストへの指導も兼ねてプロデューサー業務を行っていると伺っていますが、今回の『君がくれた夏』でも歌い方については相当なこだわりを持って制作に臨まれたのでしょうか。
西尾 「そうですね。特に歌の表現に関してのこだわりは自分でもかなり強い方だと思っています。」
——— いくつかを順を追って具体的に聞かせて頂けますか?
西尾 「まず、Aメロは短くて微妙にアップダウンがきいた音符が続いていきます。その音符をど真ん中でとらえる歌い方、かつ力を入れずに歌うことが重要だと思ったので本人にそこを意識させました。ただ自分が歌いやすいように歌った場合、『時の~は~ざ~ま~に~』というように下からしゃくったり、音符をつなげすぎたりしてしまう可能性があります。こういったミディアムな楽曲、バラードに近い楽曲というのは、そういうふうに歌いたくなる傾向がありますが、僕はロックよりのポップスと考えていたので、そこは短く切って歌ってもらいました。」
——— 確かに、歌に気持ちを込めようとした時に「短く切って歌う」という発想は中々でてこないかも知れませんね。
西尾 「そうですね。これは今井美樹さんの『プライド』という楽曲からヒントを得ています。作曲・プロデューサーの布袋さんが歌入れの際に短く切って歌うように指示されたそうで、なるほどこんな歌い方もあるのか、すごく説得力のある歌い方だな、と思ったのを覚えています。このAメロはそれに近い形かも知れませんね。このAメロは淡泊な感じに聞こえるかもしれませんが、まだ名刺を出して挨拶をしたばかりという段階では絶対にこの方が伝わると思いました。彼女にとっては、メロディそのものにリズムがついていてシンコペーションが非常に多く、短く切って歌わないといけないので、非常に難しかったと思います。それを彼女には何十回もやり直してもらいましたけどね(笑)。」
(次頁へつづく)
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